作曲する上で必要となるコード進行の作り方を初心者の方向けに解説します。
コード進行を作る方法は色々なアプローチがありますが、作曲に慣れていない方におすすめの方法は
- コード進行のパターンの雛形を作る
- コード進行をモデリングする
方法です。
そして、コード進行を作る時にはどうしても音楽理論が多少なりとも関わってきます。
まずはコード進行を作る上で最低限必要となる音楽理論の知識や情報を紹介し、その中で初心者の方におすすめのコード進行の作り方を解説していきます。
それでは早速見ていきましょう。
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コードとは?
コードとは和音とも呼ばれる音が重なり合った響きのことです。
コードはアルファベットの「C・D・E・F・G・A・B」で表記されます。
コードの種類は多岐に渡りますが、基本としてメジャーコード(明るい響き)とマイナーコード(暗い響き)があります。
コードCを例に取ると、メジャーコードは「C」、マイナーコードは「Cm」と表記されます。
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コード進行とは?
コード進行とはコードとコードが次々に鳴っていく繋がりのこと。
コードが縦の音の繋がりなら、コード進行は横のつながりといえますね。
大半の曲はコードとコードが繋がって曲のハーモニーができています。
コード進行の役割
コード進行は曲の基礎ともいえる骨組みに当たる部分で、曲の展開やストーリーを表現する要素となります。
コードが変化していくことで響きが変わり、曲のストーリーや世界観を作っていきます。
またコード進行によって聴き手に曲のストーリーの変化や世界観を感じさせることができるんですね。
コード進行を作るための基礎知識
コード進行は基本的なルールによって作られています。
つまり音楽理論が関係してくるわけです。
というと、
「音楽理論なんか知らないけど、コード進行を作れるよ!」
って言う方も中にはいますが、作ったコード進行って結局は音楽理論に沿っているんですね。
もしくはイマイチなコード進行だったりします。(実はもっとベターなコード進行があることもよくあります。)
だから、作曲をする上でコードやコード進行の深いところまで学ぶ必要は無いと思いますが、コード進行の基本は知っていて損は無いです。
自分の中のコード進行を作る引き出しや選択肢は間違いなく増えるので。
コード進行の基本ルール
コードの基本ルールとしては
- キー(調)
- ダイアトニックコードでのコード進行
ダイアトニックコード
ダイアトニックは音と音の間隔の一つで、大雑把に言えば音階(スケール)の一種です。
で、ダイアトニックコードとは、ダイアトニックスケールで使用するコードということになります。
もう少し具体的に言えば、
音楽をあまり知らない人でも知っている「ドレミファソラシ」がダイアトニックスケールに該当します。
「ドレミファソラシ」で使うコードのことをダイアトニックコード
と呼ばれるコードのことなんです。
ちなみにダイアトニックコードという場合は、多くはメジャーキーのダイアトニックコードを指します。
マイナーキーのダイアトニックコードもあり、この場合は「ラ」がスタートの位置となり「ラシドレミファソ」となります。
個人的にマイナーキーよりもメジャーキーの方が慣れていない場合はコード進行は作りやすいので、メジャーキーのダイアトニックコードを前提として説明します。
キー(調)
キーとは楽曲で使用する音階の設定のようなもの。
「ドレミファソラシ」はキーがCの時のダイアトニックスケールで、これはドから始まっている「ドレミファソラシ」だから。
キーが変われば音の始まりは変わってきます。
例えばキーがDの場合、レから始まるので「レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#」となります。
コード進行の作り方の基本
コード進行の作り方の基本は
- キーを確定する
- ダイアトニックコードを把握する
- コード進行の基本形を知る
この3つです。
キーの確定と初心者におすすめのキー
まず作りたい曲のキーを確定していきます。
キーの設定は自由です。思いついたメロディやコードの響きから決めたりします。
初心者の方におすすめのキーはCです。
理由はいたって簡単で、分かりやすいからです。
キーがCの場合は扱う基本の音はドレミファソラシドで、ピアノでいう黒鍵の部分が無く楽譜上もフラットやシャープが付くのを極力少なくできます。
メロディが先にある場合のキーの確認方法
メロディが先にありメロディに対してコードを付ける場合は、メロディが何のキーなのかを確認する必要があります。
メロディの楽譜があればそれで確認します。無ければ楽器などで耳コピします。
メロディがどの音の中で動いているか確認しましょう。
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シならC
レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#ならD
など、メロディの中に#(あるいはb)の音が使われているか、使われているのならどの音なのかを確認すると良いですね。
ダイアトニックコードを把握する
ダイアトニックスケール(音階)である場合、ダイアトニックコードは決まっています。
音楽理論的には
キーがCの場合で当てはめると
これらのコードがキーCの場合のダイアトニックコード、つまりは使う基本形のコードになります。
例えば5番目の「V7」は人によっては「V」と説明するなど。
今回は僕がプロの作曲家から教わった時のままで説明しています。
コード進行の基本形を知る
コード進行の基本形を知っておきましょう。
基本はスリーコードと呼ばれるコードを使います。
スリーコードとは、ダイアトニックコードの中の「Ⅰ、Ⅳ、Ⅴ7」のコードのこと。
キーがCの場合なら、C、F、G7です。
このスリーコードを使ったコード進行が基本形となります。
それがこちら
- C ⇨ G7 ⇨ C(Ⅰ ⇨ Ⅴ7 ⇨ Ⅰ)
- C ⇨ F ⇨ C(Ⅰ ⇨ Ⅳ ⇨ Ⅰ)
- C ⇨ F ⇨ G7 ⇨ C(Ⅰ ⇨ Ⅳ ⇨ Ⅴ7 ⇨ Ⅰ)
コード進行の作り方【作曲初心者向け】
初心者の方やコード進行を作るのにまだ慣れていない方におすすめしたいコード進行の作り方を紹介します。
- よく使われるコード進行を雛形にする
- 既存曲をモデリングする
この2つです。
よく使われるコード進行を雛形にする
コード進行の中にはよく使われるコード進行があります。
色々存在しますが、中でも
- 王道進行(JPOP進行とも言われます)
- カノン進行
- 小室進行
この3つは有名で、この3つのコード進行を雛形にしてコード進行作ってみると作りやすいと思います。
王道進行(JPOP進行)
王道進行、またはJPOP進行と呼ばれるコード進行は、JPOPの曲の中で多く使われてきたコード進行で
CからではなくFから始まって展開するパターンです。
上記はとてもシンプルですが、JPOPでは上記のコード進行をベースに
と7thやM7が入っている形が多いです。
キャッチーなコード進行を作りやすいと思うので、他にも色々試してみると面白いと思います。
カノン進行
パッフェルベル「カノン」に使われたコード進行で、超有名なコード進行です。
/は分数コードで、コードに対してベース音(ルート)が変わる場合の表記です。
例えば、コードがGならベース音もG(ソ)なのですが、G/BならコードはGだけどベース音はB(シ)になります。
シンプルに
でも構いませんが、カノン進行は階段進行とか階段コードと呼ぶ人もいるくらいで、階段を降りていくように音が順に下がっていくのが特徴的なコード進行です。
なにより響きが美しく人を惹きつけるので、分数コードを使った方を活用するのがおすすめです。
小室進行
90年代の音楽業界を席巻し、社会現象ともなった小室哲哉さん愛用のコード進行。
小室哲哉さんが作った曲の多くに含まれていたことから、小室進行と呼ばれるようになりました。
また小室哲哉さんの曲だけでなく、GReeeeN の「愛唄」や西野カナさんの「会いたくて会いたくて」にも使われているコード進行で、日本人が大好きなコード進行です。
小室哲哉さんのイメージが強いからか、デジタルミュージックとの相性が良いようにも感じますね。
そのまま自分の作る曲に使っても良いし、7thなどでアレンジして活用してみるのも良いと思います。
コード進行のパターンを音源付きでまとめました。
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既存曲をモデリングする
既存曲のコード進行は耳コピで探るのでも良いですが、楽器や書店に行けばJPOPなら大抵楽譜がありますし、五線譜でなくてもコード譜とかもありますね。
またネットにコード譜のサイトがあるので、そこでチェックするのが一番早いかもしれません。
コード譜のサイトはこちらがおすすめです。
コード進行の作り方【メロディ先行の場合】
その他のコード進行を作る際の参考になる作り方を紹介します。
メロディーの音から探す
メロディが出来上がっている場合ですが、メロディから音を探しコードを作っていきます。
コツとしてはメロディに含まれている音と同じコードを選ぶと作りやすいですね。
例えば「ド~レ~ミ~」というメロディの部分にコードを付けるのなら、
候補はC、Dm、Em、Fなど沢山あがってきます。
メロディとコードがしっくり合っているか確認しながらコードを作っていきましょう。
もちろん前述したメロディのキー(調)を把握しているのが前提です。
ベースラインから予測する
メロディの音からコードを作る他にベースラインを予測する方法があります。
これは耳コピに頼るところなので難しい方法ではありますが・・・
方法としてはメロディを流しながらピアノなどの楽器を鳴らして見つけていきます。
あくまでベースを探す作業なので、楽器を鳴らす音は一音です。
メロディを流しながら一音ならして、メロディとその音がしっくりきているか確認してみましょう。
例えばメロディを流し時に、「ここの部分はドが合ってるな」と思ったらコードはCの可能性が高いです。
(もちろんCだけじゃなく、Cm、C7など派生コードの可能性もあります)
オススメしないコード進行の作り方
DTMで作曲する場合にMIDIキーボードを使うことがありますが、MIDIキーボードなどの機能にあるトランスポーズ(キーを動かす)機能をコード進行の作成に利用することです。
この機能を使うと鍵盤の位置が「ドレミファソラシド」のまま全てのキーに変換することがきるので、キーがCのダイアトニックコードだけ覚えていれば他のキーにも活用できてしまう。
一見楽そうに思えるかもしれませんが、この作り方は自分の能力が上がっていかない作り方だと思います。
それにコードアレンジやコード修正の時のイメージングや引き出しが少なくなる可能性大です。恐らくセンスも伸びないでしょうし・・・。
なので少なくても初心者のうちにこれをするのはオススメしません。
個人的には絶対にコードの感覚は無くなるだろうなって思いますね・汗
ただトランスポーズ機能が悪いというわけでなく、鍵盤が足りなくなった時や曲の転調部分を作る時には役立つ機能だと思います。
オリジナリティのあるコード進行を作るためには
オリジナリティのあるコード進行を作るためにはいくつか方法がありますが例えば、
- ダイアトニックコード以外のコードを入れる
- コードの機能を無視
- 曲構成の変化
- 転調
などです。
つまり基本ルールを踏まえた上で、それを無視したり基本ルールの外の要素(ダイアトニックコード以外のコード)を取り入れることです。
また曲の構成を見直すことでコード進行も変わってくるので、曲の構成を変化させることも一つの方法だと思います。
これは曲によっても変わってくるので、試行錯誤して見つけていくしかありません。
ただ一番簡単な方法としては転調があります。
王道は「大サビで上のキー(半音 or 1音)に転調する」ですが、他にも
- 「Bメロだけ転調させる」
- 「Bメロで転調し、さらにサビでも転調させる」
など色々考えられます。
また転調の種類も上に転調させるだけなく、
- 下は転調
- 平行調へ転調(メジャーからマイナーへなど)
- 同主調へ転調(CのキーからCmのキーへなど)
など様々です。
転調を上手く活用すればオリジナリティのあるコード進行を作りやすいと思います。
曲の最初のコードが重要
曲が始まる最初のコードは、曲の第一印象が決まってしまう重要な部分です。
例えば明るいメジャーコードで入るのか、暗めのマイナーコードで入るのかなど、出だしで聴手が持つ印象や世界観が決まってきます。
なのでオリジナリティのあるコード進行を作りたい場合には、最初のコードも慎重に選んでみてください。
コード進行のアレンジ方法
コード進行のアレンジ方法の一例を紹介します。全てキーがCのドミナントコードで説明します。
おさらいとして、基本のコード進行はスリーコードを使ったコード進行。
- C ⇨ G7 ⇨ C(Ⅰ ⇨ Ⅴ7 ⇨ Ⅰ)
- C ⇨ F ⇨ C(Ⅰ ⇨ Ⅳ ⇨ Ⅰ)
- C ⇨ F ⇨ G7 ⇨ C(Ⅰ ⇨ Ⅳ ⇨ Ⅴ7 ⇨ Ⅰ)
代理コードを使う
スリーコードに加えて代理コードも使っていきます。
代理コードとはスリーコードの代理となるコードのことで、
- Ⅰの代理としてⅢmとⅥmが使える
- Ⅳの代理としてⅡmが使える
具体的には、Cの代わりにEmとAmが代用できて、Fの代わりにDmが代用できるということですね。
これを基本コード進行に当てはめると
- C ⇨ G7 ⇨ Am(Ⅰ ⇨ Ⅴ7 ⇨ Ⅵm(Iの代理))
- C ⇨ Dm ⇨ Em(Ⅰ ⇨ Ⅱm(Ⅳの代理) ⇨ Ⅲm(Ⅰの代理))
- C ⇨ Dm ⇨ G7 ⇨ Am(Ⅰ ⇨ Ⅱm(Ⅳの代理) ⇨ Ⅴ7 ⇨ Ⅵm(Iの代理))
上記はあくまで一例なので、それ以外にも色々なコード進行が作れると思います。
同主調のコードを使う
同主調とは主音が同じメジャーとマイナーのこと。
たとえば、Cのキーの同主調はCm、Dmの同主調はDといった感じです。
コード進行を作る時に同主調に転調するという使い方の他に、同主調のコードを使うという方法もあるんです。
これをモーダルインターチェンジといいます。用語は特に覚える必要も無いですw
Cのダイアトニックコードは
Cmのダイアトニックコードは
分数コード・テンションコード・装飾コードを使う
分数コードはカノン進行の説明で前述したように、和音とベース音が変わるコードのこと。
カノン進行のようにベースラインが隣り合うように使うと良いですね。
テンションコードとは簡単に言うと9th、11th、13thとそれに#やbがついたコードのことで、ジャズやR&Bなどブラックミュージックに多用されます。
装飾コードは上記以外のadd9、sus4、dimなどのコードのことで、経過音的に使うのが基本です。同主調のコードの使い方と似ていますね。
コード進行は音楽理論が不可欠?
コード進行はどうしても音楽理論と密接に関係してしまうので、コード進行を作るのが難しく感じてしまう人も多いです。
また音楽理論を学んだ人のほうが必然的に引き出しも多くなり、多様なコード進行を作れるようにはなるのは事実としてあると思います。
プロをはじめ、先生をしている人、バンドや歌手など音楽活動をしている作曲経験者の意見は真っ二つです。
- コード進行に音楽理論は必須だ
- 音楽理論が無くてもコード進行は作れる
個人的にはどちらの意見も非常に分かります。
プロの作曲家を目指すのであれば音楽理論は学んだほうが良いです。
ですが、趣味や音楽活動の中でオリジナル曲を作るためにコード進行作るのであれば、音楽理論には時間を掛けすぎないほうが良いって思います。
コード進行を音楽理論的に突き詰めるのは深すぎるので普通の勉強と同じ感じだし・・・汗
それに音楽理論を学ばなくても、コード進行は感覚的に作れたりもします。
プロのミュージシャンが全員が音楽理論を熟知しているわけでもないし、コードすら知らなかったというツワモノもいるようですしね。
ただ残念なことに、よほどセンスのある天才でもない限りは、コード進行の引き出しが少なくワンパターンになりがちです。
趣味であっても単純に曲を作りたいだけって場合であっても、ほんの少し簡単な音楽理論の知識を知っているだけで、コード進行を作れる幅は間違いなく広がります。
だから音楽理論は自分の作品を表現するための一つの引き出しであり武器であるって考えて、音楽活動の負担にならない程度に知っておくと良いかなっって思います。
だから音楽理論の要不要でバッサリ切ってしまうのではなく、
コード進行を作ってみて行き詰まったら音楽理論に触れてみよう
って感じで、ライトに捉えた方が継続もするし楽しいと思いますよ^^